先月29日から銀座博品館劇場で公演の始まった、『あるジーサンに線香を』。
劇中で使用されるすべての音楽を作っております。
ピアニカの独奏あり、東欧テクノもどきの極めてワタクシ度の高い歌モノあり、JAZZあり、王道な劇版あり、ママレードボーイがらみあり。
そして、劇中使用ではないけれど、幕間に使われている音楽についての解説を、本日は少々させていただきます。
曲名は、「抱いて抱いて抱いて」。
私の1998年にリリースされたアルバムに収録されています。作詞、作曲、アレンジ、歌を担当。
中村金太監督から、幕間に流す曲はお芝居の内容にどこかしらシンクロする曲で、とのご要望があり、昨年の三越劇場での公演のときには同アルバムから「みゅう」という楽曲を使っていただき、今回は多少の模様替えをする意味で、この「抱いて抱いて抱いて」を使っていただくことにしました。
お芝居の登場人物である歌手志望の女性がコンサートを開く、という設定のもと、そこでその女性がこの曲を歌っていたであろう、という流れを推測させて第二部の幕が開きます。
第二部開始の5分前からこの曲がうっすらと流れ始め、幕が開く直前に加速度的に大音量となり、曲の終わりとともに幕が開き、お芝居が始まります。
この曲はパッと聴いたところ、明るく元気なポップス。ちょっとコードやアレンジが凝っているのと、ひたすら「抱いて抱いて抱いて抱いて」と繰り返される歌に「よく息が続くなぁ」という印象を持たれる方が多いと思いますが、歌詞をお読みいただくと、この曲が今回のお芝居とつながっている、ということがよくおわかりいただけると思います。
著作権法によりこのブログに歌詞を掲載することはできませんが、エッセンスのみをお伝えしますと、、、死んでしまった恋人との逢瀬、それがこの曲のシチェーションです。
どうにも巻き戻せない時間、生者と死者を分かつ結界、それらを超えて逢瀬を重ねる恋人達の歌、なのです。
・・・・つらつらと書きましたが、もちろん文字の情報だけで音楽の世界をお伝えすることは不可能ですし、演劇も同様です。
劇場空間で体感していただくほかはありません。
公演は8日まで。
みなさまどうぞ足をお運びくださいますように!
公演日時などの情報は、
http://www.bsfuji.tv/aru_jisan/
をご参照くださいませ。
本当に素敵なお芝居です。
生きているって、すばらしい!!と心から思えると同時に、別の世界に旅立ってしまった人々をいつもよりも愛おしく感じる。そんなお芝居です。