Darieの超~お気楽日記

音楽家Darie(濵田理恵)が日々のことを綴る、超~お気楽日記。

変化

大野一雄さんのアシスタントをされていたこともあるというダンサーさんのワークショップを連日受講している。
この方は詩集のようなものや随筆集を出されていたり、音楽家さんとしての側面もお持ちで、ご自身のダンスの発表やワークショップなどで国内外を飛び回っておられる、大変にアクティブな方。
ワークショップには、決められたカリキュラムは無い。
そのときどきの参加者の状態や場の様子で、内容がどんどん変化する。
次から次へと新しい情報が身体に送り込まれて、整理する間もなく翌日のセッションとなるのだが、こうして心や身体や脳を積極的に揺り動かすと、確実に私自身の内側に変化が起こる。
その変化は内側にとどまらず、外側にもじわじわ及ぶ。
学びとか気づきには、必ずこういう面がある。


つい数日前に見たピナ・バウシュ亡きあとのヴッパタール舞踊団、彼らの公演を最初にこの目で生で見たのは、初来日の1986年。
楽家としてまだヒヨっ子だった私は、この公演に心の底から感動したのを憶えている。
ピナは間違いなく今日本で最も有名な振付家の一人だと思うし、彼女の作品がきっかけになって、コンテンポラリーダンスファンになったという人は数えきれないほどいるだろう。
今やお茶の間レベルでもその名前が浸透しているビッグネームだ。
私は一時期ピナの作品に食傷気味となり、遠ざかっていた時期がある。10年ちょっとくらいだろうか。
再び彼女の作品に触れたくなって劇場に足をまた運びだしたのが2003年。そのときのホワイエの華々しさに驚いた。
作品の面白さはもちろんのこと、ピナの持つ強力なブランド性やカリスマ、そのビジュアルのスタイリッシュさも手伝って、ヴッパタール舞踊団の公演会場のロビーには各界著名人やテレビでおなじみの文化人などがひしめくようになったのだ。
日本におけるアートの枠組みや認識を大きく変えたビッグネーム、ということになるのだろうか。ファンになった人々は、それぞれの心の中に「ピナの部屋」ともいうべき小部屋を作り、その人にしか持ち得ない個々の記憶や感覚を彼女の作品にリンクさせる。個人の中にしか存在しない、取り出して誰かに見せることのできない、その小部屋の持ち主でさえその小部屋の存在を定かに知らないかもしれない、そんなひっそりとした不可侵エリアが生まれる。
皮膚一枚の内側に起きる、とてつもない変化だ。
24年前、彼女の作品を初めて見たときの衝撃やわけのわからない感動は、当時の私を確実に変化させた。
身体中の細胞が驚き、遺伝子情報が組みかわり、全身の組成が変化した。
その結果、生活そのものや、対人関係も変わっていったのだ。
そんなピナ作品の、つい先日の公演のパンフレットが、ここ数日開催されている身体ワークショップの会場の片隅にそっと置かれている。
私が持ち込んだものだが、私自身の良き変化を心から願って、ピナを偲んで、ピナとも交流されただろう大野一雄さんを偲んで。