涼しい。
東京はもう秋に突入してしまったのか。
夏の名残を惜しむ暇もなかった。
あっと言う間に一切合切が撤収されて、気づけば控えめな秋の虫がチロチロと鳴いている。
CM作業の合間にこれを書いているのだけれど、数日前に某所でいただいた「おでん」のお味が思い出されてならない。
急に涼しくなったもんだから食べたくなった。だから作ってみた。のだそう。
もったいなくも、振る舞っていただいた。
メガネを激しく曇らせながらご相伴にあずかったアツアツのおでんは、心にとくとくと何かが注ぎ込まれるように具体的で、あたたかく、現実的なお味。
目の前で湯気を立てている超〜具体的なゴチソウには、理屈とか夢とか展望とか愛とか、そんな不確実で不確かで在るのか無いのかよくわからず定かな形を持たないものなど到底太刀打ちできないほどの、どっしりとした現実感が宿っている。
もりもりいただいた数日後、某コーヒーのCM曲を書きながら、なぜだか「おでん」の記憶が私のお脳に去来する。
美味しいものとは、食べたその瞬間に人を幸福へといざなってくれる有り難いものだけれど、何日か、何週間か、しかるべき時間が経過したのち、あるとき突然にその味の記憶が強く強く蘇ってくるものでもあるのですね。
時間差でもって再び幸福が訪れるのである。
なににせよ、今書いている曲が「おでん」風味のコーヒーにならぬよう、くれぐれも気をつけなくては。