スーパーマンが彼女を土砂の中から引きずり出したとき、彼女はすでに息絶えたあとだった。だからスーパーマンは地球のまわりを考えられないスピードで回り続け、時間を強引に巻き戻して、愛する女性の命を救った。
んもぉ・・・ンなこと、あり得ないざますっ。まったく、思いっきり胸を掻きむしって悶えたくなるほどの荒唐無稽さだが、大昔に見たこの映画のワンシーンをたまに思い出すことがある。
「あの」時点まで戻っていって、そこで「ある」選択をしようとしている過去の自分に、そっと耳打ちしてあげたい。
その選択がのちのちどんな顛末を招き寄せてしまうのか。
なにも考えず、楽しそうに、選び取ることにさえ無自覚な、それでも「ある」選択をしてしまう瞬間の自分に、何かをしてあげたい。
止めてあげられるわけでも、説得してあげられるわけでもないけれど、何か、してあげたい。
そんな「あの」時点というものが、考えてみれば幾つも幾つも、あるのだ。
・・と、ふと思うなり。
