インフルエンザ予防接種というものを受けてみようと、ふと思った。
27年ぶりだ。
家の近所の診療所に電話で問い合わせてみたら、予約無しで受けられるとのこと。
さっそく出向いてみると、やたら肌のつるんとした実直そうな受付の男性、憎らしいことになんと1時間待ちだという。
「59」と書かれた整理番号札を渡され、まずは体温を測りましょう、ですと。
え、私の前に58人もいるのですかと尋ねると、いえいえ20人ほどおいでになるだけですとアッサリ返された。
ずいぶんと混むものなのねぇ。。。
36度4分。
健康体、アレルギー無し、妊娠していない、などの諸条件をクリアし、ひとまず時間をつぶしにかかった。
この街に古くから存在する超〜老舗の喫茶店で単行本を読み、小さな宝石屋さんのショーウィンドを覗き込んでまばゆいまでに輝くジオラマを堪能し、寒さに震えながらお花屋さんをひやかし、レンガが敷き詰められた裏路地の商店街をジグザグに歩いて、きっかり1時間後。さきほどの受付の男性の前に戻ってきたら、まだあと5人ほどいるのだと言う。
短編小説をきりよく読み終えたとき、ようやく私の番がまわってきた。
27年ぶりのインフルエンザ予防注射はものすごく痛くて、「う〜〜〜」とか「く〜〜〜」とか、意味不明な唸り声をあげてしまった。
注射を打ってくれた女医さんは、この注射がとても痛い注射であったことと、長時間お待たせしたことについて、何度も何度も謝ってくださって、逆にひどく恐縮しながら家路についた。