Darieの超~お気楽日記

音楽家Darie(濵田理恵)が日々のことを綴る、超~お気楽日記。

やきもきや

先日、所用のついでに故郷に立ち寄り、高校時代頻繁に通った食べ物屋さんをしばらくぶりに妹と訪ねてみた。
そのお店は私が小学校から高校までの12年間を過ごした母校のすぐそばにあり、原則的にはその学校の生徒、それも高等部から上の学生と卒業生、つまり女性のみが入店可能とされている。学生以外には、お店の近隣の住民の女性のみなさん。男性の入店は、母校の教員、卒業生の伴侶と家族親戚に限られる。
しかし在学当時、3日に一度は通いつめていた常連の私が知りうる範囲ではあるが、近隣住民の方が店内におられたことはなく、主な顔ぶれは母校の制服を着た高校生か、同学校の短大生か大学生、稀に先生、更に稀にOGでもある在校生の母親。
なんだか同種同族同性ばかりが集う非常に閉じた空間のようにも思えるが、この「閉じ具合」が、学生にとっても学校側にとっても、日常的に安心してそこに通える魅力のひとつだった。
閉じた世界の内側にいた私達にとっては、まるで「学食」のようなありがたーい存在であったのだ。
このお店で供されるものは、「やきもき」という世にも珍しい食べ物で、一見ただのお好み焼きにしか見えない。表面にソースとマヨネーズがかかったルックスからして、これといってなんてことのない、ありふれた鉄板焼き系粉モノの一種に思える。
ところが。
「やきもき」は粉モノでないだけではなく、味や風味は、その店に通った女性達の脳の奥底にこれでもかと強く強く刻み込まれてしまうのだ。
3学年下にいた妹も、私と同じくその店にマメに通いつめ、身も心も正真正銘の「やきもき中毒患者」になってしまった。
中毒患者同士が寄れば、取るべき行動はただひとつ。「行く?」「行く♪」と極端に短いやりとりだけで、即やきもきへGO!となるのである。
学生のいない平日正午過ぎの時間帯を狙って予約を入れ、喜び勇んでの訪問。
それはそれは大満足で「やきもき」を平らげて、心残りなく郷里をあとにしたのであった。
知らず知らずのうちにお脳に深ーく深ーく刻み込まれている食べ物はいくつかあるけれど、これほどまでにその味と風味に、瞬時に自分の脳が順応する食べ物は少ない。
このメカニズムを思うと、毎回不思議な気持ちになる。
のれんには、右から読んでも「やきもきや」、左から読んでも「やきもきや」。