ジュエリーの世界で働く友人知人が何人かいる。
ハイジュエリーのデザイナー、海外に石を買いつけにいくバイヤー、アクセサリーのリフォームの達人、老舗宝石商一族の女性、神秘のパワーストーンを扱う占星術師。
いろんなタイプの、いろんな石にたずさわる人々、扱う石の値段もビジネスの規模も様々。
でもどの人にも共通しているのは、すぐれた直感力を持ち、自分の直感をつよく信じているという点だ。
「石」のエリアにただよう特殊性は、他の業種にはあまり存在しないものかもしれない。
そういえば、京都八坂神社のすぐ近くに、「石」という名の喫茶店がある。
最初は友人に連れられて、そののち一人で3度ほど立ち寄ったことがある。
その片隅では青年時代の裕次郎が昼日中からブランデーのグラスを傾けていそうな、若かりし頃の浅丘ルリ子がお化粧室からしゃなりしゃなりとあらわれて来そうな、レトロで造りのしっかりした喫茶室。
一階は石屋さんで、鉱石鉱物宝石宝飾品の類いが所狭しと置かれている。
あまりの量の石に圧倒されて、どこを見ていいのかまったくわからない。
結局何も見ないまま、喫茶室でコーヒーだけ飲んで、そそくさと出てきてしまう。
「石」のエリアには、なかなか容易に近づけないのだった。