Darieの超~お気楽日記

音楽家Darie(濵田理恵)が日々のことを綴る、超~お気楽日記。

自分のやれること

大変なことになっている。
テレビを見てもネットを見ても、危険、悲惨、不安、悲しみ、を感じることばかり。
当たり前の危機感を持ち合わせている人ならば、心のどこかが常に動揺しているはずだ。
直接の被災地ではない東京に住んでいる私でさえ、夜は眠りが浅く、今日も早朝の小さな余震にすら身体が無意識に反応して、気づけば瞬時にベッドから抜け出て必需品を詰めた持ち出し用のカバンを手にしていた。
家族と支え合って暮らしている人は、その誰かが欠けても共同体としてのダメージが大きいわけだから、家族全体で動くことがプライオリティーの最高位だろう。
逆に1人で暮らしている私は、自分の判断で、自分の本能で、今なにをするべきか、自分の心の声を聴く、ということが最優先。
で、昨日の午後は私の居住区域が計画停電エリアとされていたこともあって、音楽作業をするには不可欠な音楽機材の電源を一切入れず、ピアノを弾いて曲を書いていた。
さいわいピアノはどれだけ弾いても電気は使わないし、一生懸命弾けば身体もあたたまって暖房要らず。
もしも何かとんでもないことが起きて、いま私の身体が突然消滅しても、私が作ってこの世の中に産み落とした音楽の波動や記憶は、きっと得体の知れない「何か」に宿り宇宙のどこかに放たれていくはず。
自分はなんのために生まれてきたのか、ということ、あらためて考えながらの数日だ。


こういう尋常ならざる時期に、すごいタイミングで、俳優座劇場にて音楽劇「わが町」を観た。
友人の宮原芽映さんが全編の作詞を担当されている。
好きな戯曲であるし、なぜだかこの物語を観るべきときに観ることになったのだ。
去年の秋にも静岡SPACで観た「わが町」。
スモールタウンの、死者たちの物語。
舞台となっているグローヴァーズ・コーナーは北緯42度40分、西経70度37分にあるとされているが、実はそこは地図上では海の中。幕が開き、一見何気ない平和な日常を描いているように思えるこの物語は、作者のソーントン・ワイルダーの仕掛けた罠に満ちていて、何度観ても独特の浮遊感に包まれる。
あまりに有名なこの戯曲を音楽劇で、という試みなのでとても期待していたのだけど、すばらしかった!!
最小限のセットで、ピアノ伴奏のみの音楽劇。
長い準備期間を経て作られた作品だそうで、地震がおきた当日を休演とした以外は、私が拝見した日曜日の千秋楽まで、上演された。
観客の心をがっちりと掴んで、説明のできない複雑な「何か」を人々の心の中に残す。世の中が今このような状態にあって、尊い作業だと思う。
演劇にしかできないことがあるのだ。
同じように、音楽にしかできないこともある。
そんなことを指先で、心臓で、お腹の中で、舌の先で感じながら、自分のやるべきことを考えてる。
誠実でありたいな、自分自身に。