声を使う職業であるのに、自宅で加湿器を使っていない。使っていない、というか、持っていないのだ。
ところが先日、とある方から、「かならず加湿器を使ってくださいね」と、あくまでやさしくマイルドに、しかしすこぶる強力にすすめられた。その方からのすすめとあらば、何はともあれ、何がなんでも、使わねばならぬのだ。
なわけで昨夜、居間用にひとつ、寝室用にひとつ、計二つの加湿器を購入した。
実は私は前の家では加湿器を何個も使いつぶしている。
一冬、散々酷使して、だいたいはその年限りで廃棄してしまうのだ。
新しい家に越してきてからこっち、以前の習慣をあえて継承しない生活姿勢を目指したこともあり、まず加湿器を買わない、という方針であった。
しかし、とある方曰く、「必要ですから」とのこと。
なもんですから、いとも素直に方針変更。トットと買いに走ったざます。
設置された加湿器は居間の片隅でモクモクしてて、やはりいいもんだ。卓上のチューリップも、今日から新たに仲間に加わった新顔の多肉植物も、心なしか喜んでるみたい。
加湿器を使うと、気分が変わる。
気分が変わったので、居間の植物を新しくする。
植物を新しくすると、流す音楽が変わる。
音楽が変わると、読む本が変わる。
本が変わると、洋服が変わる。
洋服が変わると、会うべき人が変わる。
人が変わると、言葉が変わる。
言葉が変わると、心が変わる。
心が変わると、身体が変わる。
変わって、前に進んでいく。
きっとこんなふうに変わってゆく一年なのだなぁと、加湿器から立ちのぼるモクモクを眺めながら思う。
