Darieの超~お気楽日記

音楽家Darie(濵田理恵)が日々のことを綴る、超~お気楽日記。

『ダリエ百葉窓』楽曲解説。13曲目「JAZZ」

darienonikki2015-01-14

13.「JAZZ」


作編曲:Darie
身体の景色(岡野暢)の公演『JAZZ』に出演させていただいたときに作りました。
初演は2009年4月4日。


2008年の4月、演劇ユニット・LABO!による『十二夜』の公演がありました。
私も音楽家として出演させていただきました。
↓アルバム1曲目「十二夜」の解説はブログにも記しております。ご参考にされてください。
https://darienonikki.hatenablog.com/entries/2014/12/28


その公演をご覧になって、私にご自身の公演へのゲスト出演のオファーをくださった方がいました。
岡野暢さん。
岡野さんは「身体の景色」というプロジェクトを主宰しておられます。
SCOT(旧:早稲田小劇場)の鈴木忠志さんのもとで多くの公演に出演され、2007年に「身体の景色」としてソロ活動を始められました。
なぜ私を作品に呼んでくださるのか理由はよくわかりませんでしたが、とても面白いことになりそうな予感がして、とにかくお請けすることにし、まずは直近に行われた岡野さんの公演を拝見しました。
舞踏的要素の強いソロパフォーマンス。緊張感がみなぎると同時に、清涼感があり、見終わったあとは心身がすがすがしくなりました。
私が関わることになる作品は、岡野さんとの二人芝居であること、おそらくパフォーマンス色の強い作品になること、などはあらかじめ伺っていました。
しかし、どんなふうにお稽古を進めていくのかについては、私もあまりお訊きしなかったのですが、この方のお稽古の進め方は実に独特でした。
当時私の借りていた家にはグランドピアノが備え付けられた、11畳ぐらいの完全防音された音楽室がありました。打ち込み作業はもちろんのこと、自分のライブのための小さな編成のリハーサルや、ちょっとした音楽打ち合わせにも大変に重宝する音楽室でした。
その音楽室に、公演のおよそ半年前から岡野さんは週に一度ほどお越しになり、公演に向けての稽古が進められました。
いろいろな文章の断片を読んでみる、声を出してみる、音を出してみる、身体を動かしてみる、それらを即興的に行ってみる、などのエチュードを繰り返しながらお稽古は少しずつ進んでゆきました。
そうして徐々に構成されたテキストは、岡野さんの独特の手法により、きわめて身体的な作品へと進化していきます。
途中から田中圭介氏が新たな演出家として加わり、さらに映像作家の稲葉雅巳氏が加わり、実験的な側面を強く押し出しながらも、周到に練られた舞台作品が出来上がっていきました。


当曲「JAZZ」は、この作品のために私が作った音楽の中で、唯一音源として残っているものです。
公演では舞台上で多々ピアノを弾き、もちろんボイスパフォーマンスもしましたがすべてが即興に近いもので、この曲の他に録音物は作りませんでした。
岡野さんはいつも通り嘘のない身体ひとつで舞台に臨まれ、いっぽう私は肉声ではなくヘッドセットのマイクで声をひろって加工したボイスをスピーカーから出す、という形式。
今にも消え入りそうなかすれ声、囁き、息を吸いながらの発音、超音波のような声、楽器のような声、祈りにも似た吃音、などなど。
岡野さんに確かな技術と身体性が備わっているからこそ、私は自分で自分の身体を遊ぶ自由が許されていて、とても面白い作業でした。
男女の中身が突然入れ替わったり、私のセリフに岡野さんの役柄のセリフがオーバーラップしたり、トランスジェンダーやトランスパーソナルなことがごく当たり前に行われるのは岡野作品の特徴です。
女、男、語り手、それらが光の速度よりも速く瞬時に入れ替わる。空間と時間の軸が僅かにねじれる瞬間を幾度も繰り返しながら、とにかく前に前に、進んでいきます。
観る側にとってみれば難解な部分の多い作品だったと思いますが、作品が終わって静寂のうちに演者が舞台上から去り、カーテンコールで再び舞台に戻ってきたとき、たくさんのお客様のあたたかい拍手に迎えられたのは、岡野さんの演劇人としてのキャパシティの広さによるところが大きかったでしょう。
終演後の岡野さんの笑顔は、共演者としての私を受け容れ、自分で作った作品を受け容れ、すべてを受け容れる、素敵な笑顔でした。


↓次回解説はコチラ
『ダリエ百葉窓』楽曲解説。15曲目「ソノ夕日ノ涯マデ」 - Darieの超~お気楽日記






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平成27年1月17日(土)14時開場 14時半開演
於:北とぴあ つつじホール(東京都北区王子1-11-1)
全席自由2,000円
チケットのご予約は平安楽舎事務局(tel: 045-542-0702)にて承ります。