今日は雪が降るらしいわね。
母の声を聞きながら玄関の扉を開けた途端、ほんとうに雪が降ってきた。
吹き込んだ冷たい風と一緒に、幾つもの白い粒が家の中に迷い込んできたのだ。
エンジンをかけて車をあたためている最中にも、フロントガラスにぽつぽつと雪の粒がぶつかってくる。
首をのばしてバックミラーを覗き込むと、無造作に髪にもまとわりついてる。
でも、大阪の雪は、つもらない。雪が降ることそのものが稀なのだ。
「みそぎ」のような、いっときの雪が降りしきったあとには濁りのない青空があらわれ、風はたいそう強かったけれど、近所の神社はまだまだお正月気分を残していて境内にはたくさんの参拝客の姿。
強風、まぶしい青空、カラフルな晴れ着、家族連れ、屋台、突風に巻き上げられる砂埃。
神社というものすごく日本的な場所にいながら、私はなんだか外国に来てるみたいな気持ちになった。
そう、きっと私はいま、どこか外国に来ているんだね。
帰るべき本国はどこだろう。
もちろん私の本国はこの日本で、私は間違いなく純粋な日本国籍を有している。
でも毎年お正月には、ここがどこなのか、私は誰なのか、どうにも定かでない気持ちになるのだ。
