Darieの超~お気楽日記

音楽家Darie(濵田理恵)が日々のことを綴る、超~お気楽日記。

かのひと

卒業式シーズンだ。
お仕事でよくお目にかかる男性がおっしゃるに、子どもさんの小学校の卒業式のために会社を休まなければならないとのこと。
あら〜おめでとうございます〜。でも男親って出席される方少ないから目立っちゃうんじゃないですか〜?
とおたずねしたら、最近はそうでもないらしい。
やはり少子化、ということかちら。
友人達の家庭もほとんどが一人っ子核家族だ。
思えば私が小学生の頃は一人っ子さんがとても少なかった。
兄弟姉妹が増えるにしたがい家庭内はいろいろ慌ただしくなり、一人っ子家庭にはないバランスが生まれる。
たとえばお兄ちゃんの卒業式のときには両親揃っておばあちゃままで出席したのに弟のときにはお母さまだけ、なんて兄弟間で格差が生まれるとよろしくないとの配慮から、あえて無理に出席されないお父さまもいらしたと聞いたことがある。
時代は移り変わっていくのね〜。


最近、読書にもってこいの場所に頻繁に出向く用があり、本日持参したのは「心に残る物語ー日本文学秀作選 沢木耕太郎編」。
今をときめく作家さんおすすめの短編ばかりを集めたオムニバス集なのだが、この本には私の好きな庄野潤三プールサイド小景」がおさめられている。
庄野潤三氏は、私が小中高と通った学校の初代学院長の息子さん。
お父さんの初代学院長は庄野貞一さんとおっしゃる方で、校庭脇の植え込みには氏のお言葉を彫った石碑があった。
かなりわかりやすい場所に石碑は設置されていたから、生徒達は毎日その石碑を横目で眺めながら過ごすことになる。
石碑には「一にも力、二にも力、三にも力、力の人」と彫られてあるのだが、小学部に入学した私はまずその石碑を眺め、「いちにもか、ににもか、さんにもか、かのひと」と読んだ。
そのとき以来、寸分の疑問も抱かぬままに12年もの間「かのひと」と彫られた石碑を見て楽しい学校生活を送っていたが、高等部を卒業するにあたり、あらためてその石碑を眺めてみると、「かのひと」ではなく「ちからのひと」であることにハタと気づき、ひどくショックをうけた。
思い込みとはかくもおそろしいのだ。
桜のつぼみも膨らみかけようという卒業式シーズンになると、あの石碑を思い出しては一人自戒の念にかられるのだった。