まるで、大昔のような、そう、私が音楽業界に足をつっこみはじめた頃のような録音をしてみることになった。
すべて生楽器で、さすがにすべてのセクションが「せーの」で同時に録音しないとしても、こういう録音は昨今では本当に珍しい。
なもんで、準備の段階から、私の心境もいつもとは少し趣きが違うことになっているのだ。
まずは譜面をきちんと書くところから。
私が高校時代にセミプロ活動をはじめた頃は、みんなこういうふうだった。
しかし世の中打ち込み主体の音楽ばかりになってからというもの、どうかすると譜面など一小節分も書くことなく10分を超える楽曲だって苦労なく仕上げることができるのだから。
このお手軽さに慣れきってしまってる我が身にはたまに鞭打つ必要があるな、と思っていたところに、敏腕ディレクターさんから今回のオチゴトの依頼。あまりのタイミングの良さにシビレた。
人間は機械じゃない。
どんなに正確にリズムを刻む優秀なドラマーだって、走るし、よれるし、疲れてくれば間違える。
それが当たり前だということをみんな身体でわかっていたのだ、かつては。
そんな、当たり前のこと、油断すると忘れちゃうのねえ。
人間は機械のようには割り切れないし、オンオフはできない。
頭のどこかでわかっていても、ほんとに忘れちゃうのだ。
