Darieの超~お気楽日記

音楽家Darie(濵田理恵)が日々のことを綴る、超~お気楽日記。

日向の薫り

darienonikki2008-12-11

親しい友人が亡くなったことで落ち込まない人はいない。
4年前、お世話になったお店のマダムが亡くなったときも、膝から力が抜けて、歩いていてもどこか生暖かいプールの中を立ち泳いでいるようだった。
当時飼っていた犬の首筋に顔をうずめてはフガフガ日向の薫りを吸い込んでなんとか凌いでいた感じだった。
そうじゃないと、どんどん自分のいま生きてる現実世界から遠のいていくような気がした。
日向の薫り。
そうなのだ。日向の薫りは、癒しの手は、すばらしいタイミングで差しのべられる。
それはたとえば、友人との美味しいお食事だったり、こんなときにでも溶岩みたいに突如流れ出る創作の情熱だったり、スカルラッティのピアノ・ソナタだったり、倒れそうに甘い月餅だったり、開いた本の頁からひときわ浮き出てくる誰かの印象的な一言だったり、目の前にひろがる笑顔だったり、忙しさだったり、探し物ついでに出てきた過去の自分のお仕事作品だったり。


わけあって、以前に作ったお仕事作品を家のスタジオであれこれ物色していたのだ。
すると、とうに無くしたと思っていたとあるお仕事のサンプルCDが出てきた。
12年前、ある野球選手さんのために曲を書いたことがあった。そのシングルCDだ。
どういうわけだかこのCD、曲を作っておきながら実は一度も聴いたことがなかった。
アレンジは他の方が担当されたこともあって、私の作業は譜面だけ書いてお渡ししたに等しい。
その野球選手さんは歌手活動をされることもなかったので、その後なにかでその方の歌を拝聴する機会もなく。
そうこうするうちにその方はメジャーリーグに移籍、引退後はタレントさんになられ、現在も大変にご活躍だ。
せっかくだし、このサンプルCDを明日母校に持って行くことにしよう。
で、それをただいま聴いておりんすが、私が自分で作った曲とはまったく思えない!(笑)
自分らしさがどこにもない。(笑)
なぜだろう。
こんなことってあるかしら。でも、あるのです。
こういう不思議が起きるのも、作家活動の面白いところ。
自分だけど自分じゃない自分。
いま抱えてる悲しみも自分だけど、そうじゃない自分をものすごく具体的に見たり取り出したり書いたりできるのが、この稼業のいいところかもしれない。
少なくとも、いまの私にとっての、日向の薫りだ。