来客があるたびに、お出ししようと思いながら、ここ10日ほど一度もお出しできなかったお菓子。
近隣の、とても美味しい洋菓子屋さんで購入した「チュイル」という焼き菓子だ。
この10日間というもの、涎をたらしながら指をくわえて棚の上のチュイルを眺めていたが、いよいよ賞味期限が迫ってきたので、本日のお客人のために封を切った。
まずは一枚、パリパリと味見。薄く、香ばしく、歯触りよく、程よく甘く、素朴でかわいい、とても美味な焼き菓子である。
数枚、他の焼き菓子とともにお皿に盛って準備したはいいが、お客人はこの手を召し上がらない方であったので、帰られてのち、コーヒーを入れ直して、一人でひっそりといただいているところ。
これが、、、たった3時間ほどの間にものの見事にフニャけておりガッカリもするが、本来はパリパリとした食感が身上なものがフニャけている状態というのもなかなか味わい深いのだ。
「ぬれ煎」的な面白みがある。
本来はこうであったはずの人が、意外にも別の道を歩んでいる。
その意外な方向性が、意外にもイケている。
というような話しが出たのであった。
フニャけたチュイルが案外美味しいのと同じく、どんなことになっても、どうにかなってしまえる、そのことが、すばらちい。
どうにかなってしまうことを、がむしゃらに押しとどめず、受け入れて、楽しんでいる人たちがいる、ということに、とても嬉しい気持ちになった。
