Darieの超~お気楽日記

音楽家Darie(濵田理恵)が日々のことを綴る、超~お気楽日記。

社長サン

私が暮らしているのは、とてもちいさな街。
この街での交友関係のほとんどは、半径1.5キロ圏内にすっぽりおさまってしまう。
気候のよい季節ならこの街の中であれば徒歩でどこへでも行けてしまうが、ハイヒールをはいていて長距離の歩行が困難とか、荷物があるとか、急いでいたり、というときは、タクシーを呼ぶ。
住宅街なので、家の前の通りで1時間待っていても空のタクシーにはお目にかからないけれど、タクシー会社に電話をした3分後にはもう玄関前に車が到着し、どうかすると10分後には電車の中、ということもある。
普通タクシーを呼ぶというとなんだか大層なことのように聞こえるけれど、この街ではあまり特殊なことではなく、前述のように自分の車で動けないとき、荷物が多かったり急いでいるときは、駅まで、あるいは隣街の知人の家まで、という具合にそこそこ頻繁にタクシーを利用しているわけだが、、、、最近ちょっと面白いことがあった。



いつも同じタクシー会社を利用していると、同じ運転手さんに何度も当たる、ということが起きてくる。
我が家の前におそらく10回はおいでになっていると思われる年配の運転手さん、私が乗り込むと必ずキャンディーをひとつ手渡してくれるのだ。どのお客さんにもおそらくそうしているのだろう。最初はちょっと抵抗があったけれど、最近はお礼を言って気持ちよく受け取ることにしている。


何十年もタクシーの運転手さんをされていると一目見ただけでお客の職種を見抜いてしまうものだと聞いたことがあるが、あるとき、この運転手さんとの会話でどうにも噛み合わない感触を得た。
会話といっても、駅までの短い乗車時間の間にひとことふたこと言葉を交わす、その程度のこと。
なんのことを言っているのか、やけに私の仕事に関してご存知なふうの口調なのだが、それがまったく的確ではない印象があったので、差し障りのない程度に補足説明しようとしたところで目的地についてしまった。
その翌週、またタクシーを呼ぶと、同じ運転手さん。
果たして、会話はまたしても噛み合わず、どうやらなにか大きな勘違いをされているのでは、と思いいたった。
具体的に再現するとですね、、、


〜〜連休前の土曜日、午後4時乗車、都心で仕事先の方との打ち合わせ後、知人と会食の予定〜〜

運「今日もお仕事なんですか?」
ダ「はあ、まあ」
運「連休は、でもお休みなんでしょ?」
ダ「はあ? あまり関係ないんです」
運「交代してくれる人がいなくなっちゃうんですか、世間が休みだとね、お客さんも来ないしね、連休は」
ダ「?」
運「たいへんだねぇ」
ダ「・・いえ、まあ、ひとりでやってるので、交代しようにも・・。お休みも自分で決めますし・・」
運「え! ひとり? 女の子、他にだれもいないの?」
ダ「いや、あの・・・・仕事は家でやってますので・・」
運「え!!! へぇ〜〜〜!!! 社長サンなんだぁぁぁ!! そりゃぁお見それしました。いやぁ、お仕事ごくろうさんですねぇ!」
ダ「は? はあ、そういうものでもないんですが・・」
目的地に到着。料金980円也。
運「がんばっていってらっしゃいっ!」
ダ「??? あ、ありがとうございます」


要するに、この1年ほどの間、その運転手さんは私の職業を水商売だと思い込んでいた、、、のですね。
音楽もまあ水商売のようなものだけれど、しかしいくらなんでもホステスさんって、もっと綺麗にしてるものじゃないかちら? 髪なんかこう美しく結い上げてたりして、爪もサロンできちんと整えて、携帯電話はラインストーンで華麗にデコレーションしてあったりなんかして、なにより、なんとも浮世離れした風情を漂わせているはずなのだよ、そういう女性は、私の一方的な偏見と思い込みだけれど。
日常的にピアノを弾くのであるから爪はのばせず、半年に一回しか美容院に行かず、歩いているうちに乾くだろうと洗い髪のままタクシーに飛び乗るような女が、いくらなんでもホステスさんなわけないじゃあーりませんか。
しかも、勝手に「社長サン」と誤解(まあ、私はごく個人的な会社を経営しているから社長にはかわりないけれど、この運転手さんの言ってる社長サンとはちょっと違うなぁ)したあとの態度の変わり様が、あまりに如実であった。
なんか、「ホステスさん<<<<<<<<<<社長サン」という彼の中の図式がむき出しになっていて、それっていったいどうなのよ、と思った。
ましかし、今でもその運転手さんの後部座席に乗り込むと、社長サンに昇格(笑)した私に相変わらずキャンディーをひとつ手渡してくれるから、まあ、いいか、とも思う。
これも狭い街に暮らす面白いところなのだな。