特定の

香りが、これほどあらゆる記憶を呼び覚まし、意識を無造作に撹乱せしめるものだとは。
スパイスもそうだし、香水の匂いも脳を直接ズガーンと刺激する。
調理していたときの特定の記憶が、特定の料理によって、バーンと眼前に繰り広げられることもある。
ズガーンとかバーンとか、そういう抽象的な擬音でしか言い表せない、とても特殊な状態だと思う。

・・・実は10日ほど前に作った特定の料理を10日経った今朝、一匙、頬張ってみたのだ。
食糧難でもなかろうに、そろそろ食べ物の傷みやすくなってきたここ数日の陽気、10日も前の料理をわざわざ口にしなくてもねぇ、、、ではあるけれど、とにかくそれをやってみたかったのだ。
たった一匙分残っていた特定のシチューを大切にいただいて、ヨガに出かけた。
もちろん、腐敗することなく、保存状態は極めて良好にして、すばらしく美味、そして、しんしんと興味深く。
特定の場所の、特定の時間の、特定の空気を抱き込んだ、特定のお味、特定の香りだった。