これから私が毎日(じゃないかもしれないけど)弾くことになったグランドピアノ。
今までの家にあったグランドよりも少し大きく、だいぶ古い。
姿と同様に、大きく、古い、音がする。
このピアノ、大家さんの持ち物なので、今、私がいるこのオウチと同様、借りモノである。
なんと、世にも珍しいピアノつき賃貸物件に単身越して来たというわけだ。
私の息子にも等しい愛犬は、今までのオウチで元家人達とこれからも平和に暮らす。
大丈夫。キミは博愛犬だからして、絶対に誰からも愛されるし、誰とでも仲良くできる。育てた私が保証する。
長く住んだ家を離れるということは、むろんそれに相当する出来事が積み重なった結果なわけで、あの家の中でのすべての経過を知っていて一番事情に通じている彼は、ぜーんぶ了承したような眼差しで見送ってくれた。
別れ際には吠えなかった。そのことに、私はとても感動してしまった。賢い子だ。
さて、きちんと音楽をやらなくてはね。自分のために。丁寧に。誠実に。